DANSK MOBEL GALLERY のインテリアコーディネートの主軸となるデザイナーに、ポール・ケアホルムがいます。ポール・ケアホルムは素材や構造への特別なこだわりから『奇才』ともいわれた、デンマークを代表するデザイナーのひとりです。
今回のブログでは、彼がデザインしたデイベット“PK80”と“PK81”についてご紹介させていただきます。シンプルなデザインに込められたケアホルムのあくなき探求心に触れていただけましたら幸甚でございます。
【ポール・ケアホルムが見出したスチールの可能性】
ポール・ケアホルムの作品の多くはスチールを用いたものですが、そのなかでも代表的な作品に、ラウンジチェア“PK22”があります。“PK22”をデザインするにあたり、ケアホルムは弾力のあるスプリングスチールをフレームに使用。この素材を用いることで、“PK22”は家具として完成し、成功を収めました。(当時、日本においてこの“PK22”を模して家具が作られたことがあったようですが、座るたびに脚のスチールが前後に開いていってしまい、家具としては成り立たなかったという話を聞いたことがあります)。
1956年の“PK22”の発表以降、ケアホルムはソファやダイニングチェア、サイドテーブルなど様々な家具においてスチールの可能性を模索し、デザインを試みました。このたびご紹介するPK80は1957年のデザイン。洗練された構造と佇まいが、いかにもポール・ケアホルムらしい哲学を表しています。
印象的なプロポーション、考慮された素材、ジョイントのエレガントさ、そしてパイピングを施した伸びやかなサイズ感のマットレス。“PK80”はケアホルムの初期デザインのアイコン的な作品となっています。
【デザインの輪廻 リ・デザイン】
“PK80”は、1930年にミース・ファン・デル・ローエとリリー・ライヒがデザインしたカウチがモデルとなっています。モデルとなったカウチの構造は、ゴム製のストラップと鏡面仕上げのスチール製の脚を備えたヒバ材のフレームに、革製のマットレスとピロークッションを載せたものです。
このカウチはローマ時代の寝椅子を参考にデザインされています。バルセロナデイベッドは家具デザイン史上、疑う余地のない名作であると言えますが、時代背景と共に変化する生活様式や美意識に合わせてデザインを昇華させることで、このような名作が生み出されていることが分かります。
ケアホルムはピロークッションを失くしてシンプルな構成にし、フォルムを明確にするだけでなく、レザーやプライウッド、スチールなどの異なる素材による構造を敢えて見せるよう考えました。このように、「構造を見せること」は、ケアホルムの大きな命題の一つでもありました。数多くのケアホルムの作品では、そのことが見て取れます。
PK80の構造と素材の用い方は、構造や素材について深く理解していたケアホルムの才覚であり、素材同士がデザイン的に、また機能的に共鳴すると考えた結果、生まれたものと言えます。
【魅せる構造の美】
ケアホルムはパーツを独立してとらえ、その構造が見えるように考えています。構造を見せることができるのは、パーツひとつひとつに十分な考慮がなされ、デザインの一部として十分に美しいという自信の表れであると考えられます。完成度の高い構造と素材は、それ自体が美しいデザインとなり得るのです。
【新しいジョイント Oリング】
スチールフレームとプライウッドの結合にはゴム製の『Oリング』を使用し、当時のパートナーである製造の担い手コル・クリステンセンからのリクエストである『輸送を考慮した分解』を実現しました。
この『Oリング』は、“PK22”や“PK61”でマシンスクリューを使用した時と同様、新しい構造、素材として注目を集めました。当時の木工製品の接手と同じ役割を持ちながら、工場生産が可能、熟練の家具職人の技術も不要な画期的な構造だったのでしょう。
【完璧な空間概念の極限 スクエアフォルムの“PK81”の誕生】
“PK80”は1957年にデザインされ、同年、コル・クリステンセン工房でナチュラル、ブラック、レッドのレザーで生産が開始されました(現在の正規製造メーカーは、フリッツ・ハンセン社に移行されています)。
そして1959年、デンマークのターンビーの新市庁舎のパブリックエリアに『140x140cmの正方形』のデイベッドをデザインしました。
そのほか、国立博物館やデンマーク国立美術館でも採用されています。この正方形の美しいデイベッドは“PK81”としてコレクションに追加されました。
こちらのPK81は、ベースの形状に特徴があります。センターテーブルの「PK61」同様、井桁のようにベースが組まれており、このことにより、独特な浮遊感がでます。
【アートスペースでの採用】
2004年、“PK80”はニューヨーク近代美術館の展示室のベンチに採用されました。
公共の場で使用することを考慮して、フレームの高さを7cm、マットレスの厚みを2cm増やすことで座面を高くしています。
この特別な“PK80”はスペシャルオーダーとして製作が可能です。
そのほかにも数々のアートスペースに採用されており、これらは卓越した審美眼を持つ建築家や芸術家に評価された美しいデザインであることを証明しています。
【PK80 納品事例】
当店でもケアホルムの傑作に魅了されたお客様に数多く納品させていただいております。デイベッドを含んだリビングルームやエントランスの納品事例をご紹介いたします。
PK80はじめポール・ケアホルムのアイテムにつきましては店舗にも展示しておりますので、どうぞお気軽にご相談くださいませ。
【インテリアコーディネート】
※当店ダンスク ムーベル ギャラリーではインテリアコーディネートも行っております。
詳細はこちらのページよりご覧くださいませ。
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