建築家 “アルネ・ヤコブセン”。
彼は、建築だけでなく、建築に関わる環境全体を見た上で、”その建築に置かれるべき家具や照明器具、建具、テーブルウェア”等をデザインします。
現代では、建築は建築家、内装は内装デザイナー、照明は照明デザイナーが監修をする事で、スペシャリストの皆様が相乗効果を引き出す形式が多くなっておりますが、アルネ・ヤコブセンはそうではありません。建築を基盤に、内装も家具もテキスタイルも何から何まで、その環境に”あるべき”もの全てを創り出します。アルネ・ヤコブセンのどのような事にも対応できる柔軟性、そして、自身が納得する空間を作り出す為の情熱と探究心は凄まじいものです。
「どんな建物であれ、建築という用語から外されるべきではない。その建物がきちんと作られたものであれば。重要な要素はプロポーションです。」と彼は語っています。
今回の記事では、そんなアルネ・ヤコブセンが生涯に手がけた4つの学校、1950年の「ホービュー・セントラルスクール」、1957年の「ムンケゴー小学校」、1964年の「ニュエア小学校」、1964年の「オックスフォード大学/セント・キャサリンズ・カレッジ」の中から、最も後期に手掛ける「オックスフォード大学/セント・キャサリンズ・カレッジ」と、そして、セント・キャサリンズカレッジの為に誕生した “オックスフォードチェア” をご紹介致します。
【アルネ・ヤコブセン】
1902年2月11日 に生まれ、やんちゃな幼少期を過ごし、1924年にデンマーク王立芸術アカデミーの建築科に進学。王立芸術アカデミーでは、建築家の「カイ・フィスカー」に師事。No.45やチーフテンチェア等をデザインした “フィン・ユール” や現在当店にて展示しているエリザベスチェアやシールチェアをデザインした “イブ・コフォードラーセン” も、この「カイ・フィスカー」に師事し、建築を学んでいます。彼らは、それぞれの個性を建築に反映させながら、同時に、素晴らしいデザインの家具を生み出していきました。
アルネ・ヤコブセンの幼少期や彼の代表作であるエッグチェアについては、こちらの記事もご覧下さい。
曲線の美しさを感じる “EGG™ エッグチェア”
【オックスフォード大学とセント・キャサリンズカレッジ】
オックスフォード大学は、イギリスの大学都市、オックスフォードに11世紀に設立され、38のカレッジから構成されています。イギリスの歴代の首相やノーベル賞を受賞している学者等、数多くの著名人がこの大学を卒業しています。そんなオックスフォード大学の中で、1962年に完成した”セント・キャサリンズカレッジ”は34番目に創立したカレッジです。
あまり知られてはいませんが、オックスフォード大学の多くのカレッジは、一般の方が学生寮に宿泊をする事ができます。歴史ある大学の空気を肌に感じながらの宿泊は、大変魅力的です。皆様、機会がありましたら是非ご参考ください。
【セント・キャサリンズカレッジプロジェクトの始まり】
アルネ・ヤコブセンがデンマークで初めての高層ビル ”SAS ロイヤルホテル”を手がけていた頃イギリスでは、11世紀に礎が築かれた歴史ある”オックスフォード大学”の新たなカレッジ建設のプロジェクトが始動していました。イギリスの伝統的な大学だった事から、今までイギリス国内の建築家を起用する事が多かった中、今回のプロジェクトでは国外の建築家にも目を向けられました。イギリスやアメリカの建築、そしてデンマークの建築、建築の視察だけで約2年の歳月を費やし、その視察の結果、新カレッジを任せる候補として選ばれた建築家候補は4人。
そして、SASロイヤルホテルやルドロワ市庁舎を設計した”アルネ・ヤコブセン”
そんな4人の候補者の中から厳正なる審査の結果、アルネ・ヤコブセンに白羽の矢が立ちます。彼が手がけたムンケゴー小学校が決め手となりました。
1959年、アルネ・ヤコブセンはオックスフォード大学に正式な建築・設計者として招待され、ランドスケープ・インテリアデザイン・家具・重機のデザインを含む、トータルでの設計を受諾します。当時は、イギリスの伝統ある大学の設計に他国の建築家を入れる事に対し、大きな議論もありました。アルネ・ヤコブセンとしても、非常に大きなプレッシャーです。彼はそのプレッシャーを乗り越え、今までの経験と知識を十二分に発揮し、学校関係者は勿論、イギリスという国にも愛されるカレッジを、彼は完成させます。
庭を広くとり植栽を多くする事で、生徒たちの交流の場を作りながらも、建築のシャープな外観を緩和させます。建築物に関わる環境に、植物をも自身で活用するのです。
建築の選考委員会の中心的な人物で、将来セント・キャサリンズカレッジの学長に就任するイギリスの “アラン・ブロック”。実は彼の父親は庭師でした。生まれ変わったら庭師になりたいと生前話していたアルネ・ヤコブセン”、選考の中でアラン・ブロックは、建築と共に庭師の父が作り上げる庭とも、親近感を感じていたのかもしれませんね。
そして、そんなアルネ・ヤコブセンらしいシャープでモダンな建築の外観を中和するかのような曲線を帯びた、”オックスフォードチェア”をデザインします。
【オックスフォードチェア】
大学の教授の為にデザインされているこのチェアは、無駄ながなく、抜群の座り心地でありながら、非常にシンプルなデザインです。
セント・キャサリンズカレッジでは食堂にて、教授用のスペースにハイバックのオックスフォードチェアを、生徒用のスペースにはセブンチェアを使用しています。教授と生徒が同じ部屋で同じ時間に食事を取る事で、生徒に緊張感を与えながらも、コミュニケーションのきっかけを作ります。また、教授用のスペースの床を1段高くする事で、オックスフォードチェアが連なった空間をより権威ある空間として成り立たせたのです。
現在、オックスフォードチェアはデンマーク家具ブランド “FRITZ HANSEN”にて、今尚製作されています。2019年現在、ローバックとミドルバックのみの展開で、オリジナルのハイバックは現在廃盤となっております。
また、背の高さの違いに加え、アーム付きモデルやキャスターベース等もご用意が可能です。
シンプルなデザインのチェアですが、アームやベースに使われているスチール部分の仕上げにも、いくつかオプションがございます。
現在、当店DANSK MØBEL GALLERYでは、オックスフォードチェアのミドルバックを展示しております。
書斎用に最適な、アーム付き・キャスターベースとなり、高さの昇降やチルト機能を兼ね備えております。各種張地サンプルもご用意しておりますので、銀座にお越しの際は、是非お立ち寄りの上、お試しください。
DANSK MØBEL GALLERY(ダンスク ムーベル ギャラリー)
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