当店の商品には普遍的なデザインが多く、家具といういわゆる製品ではありますが、どこかしらアート性を感じさせるものも大変多いです。このたび、家具をモチーフにデザインとアートの領域を行き来する、【 Movement in Silence 】と題されたエキシビジョンが開催されました。本日はそちらをご紹介させていただきたいと思います。
このたびのエキシビションにて取り上げられたのは、フリッツ・ハンセン社にて製造・販売されている「Lily Chair / リリーチェア」。当店でも大変人気が高いチェアで、建築家でありデザイナーでもあるアルネ・ヤコブセンが1970年にデザインをしました。
本エキシビションは、Lily Chair 50周年アニバーサリープロジェクトとして、工芸とデザインの世界で存在感を示す韓国の5人のアーティストを起用し開催されました。プロダクト・デザインとして確固たる地位を確立しているリリーチェアをどのようにアートとして表現し直すか。
それらの作品につき、動画と画像などでご紹介させていただきます。
【 Movement in Silence 】
【 White Chair / ホワイト チェア(ペク・キョンウォン作)】
アルネ・ヤコブセンは、植物・自然を大変好みました。そのヤコブセンの持つ自然に対する関心の深さを、リリーチェアは表しています。こちらの「White Chair」は、リリーのフォルムの背景にあるものに焦点を当てています。チェアの上部は花を連想させ、ベースは植物の茎を表現しています。ペクの手法で粘土を積み重ねたベース部分とは対照的に、チェアの上部は3Dプリントにより元のフォルムが維持されています。手でアート作品を制作することの親しみやすさにテクノロジーが組み合わされ、調和のとれた質感の自然なフォルムが作り出されています。
【 Block Chair / ブロック チェア(ユン・ラヒ作)】
ソウルを拠点に活躍するユン・ラヒは、アクリルを用いた作品を制作。「Block Chair」を構成するのは手染めした透明なブロック。チェアに繊細でありながらも深遠な印象を生み出しています。アルネ・ヤコブセンの持つ、素材を生まれ変わらせる能力や彼の実験的なアプローチ、そしてシンプルなフォルムに触発されたのがこちらの「ブロック チェア」。アクリルという素材も用い、その可能性を広げるという手法は、根源的かつ抽象的に、ヤコブセンのデザインスタイルを継承していることを表現しています。
【 Primeval Chair / プライミヴァル チェア(イ・ドンイル作)】
「Primeval Chair」は、50年前にアルネ・ヤコブセンがリリーを考案した時点-不完全でありながらも可能性に満ちた初期の段階- を表現しています。
原始的な生産方法を想起させるために、古くからの製造方法である鋳造(ちゅうぞう)が採用されました。制作過程で表面には自然な表情が生まれ、チェアの周りのアルミニウムのかたまりが硬化し鋳型の跡が見られるようになり、結果として予期せぬ不完全なフォルムが生まれています。オリジナルのプロトタイプを想起させ、リリーが最終的に完成するまでの段階的な完成度を感じさせるために、背もたれ部分は意図的に取り除かれています。
【 Volume Chair / ボリューム チェア(イム・ジュンジュ作)】
「Volume Chair」は、リリーの対照的なバランスから着想を得ています。
リリーのプロトタイプをインスピレーションとして、フォルムの境界を押し広げました。ウッドを重ねてカッティングする工程で生まれたチェアの佇まい・フォルムには、リリーの流れるような曲線を見出すことが出来、見るものにリリーを想起させます。
【 Paper Chair / ペーパーチェア(ジュリオ作)】
オッチル(漆塗り)を用いた作品「Paper Chair」は、リリーのデザインと製作に際して、アルネ・ヤコブセンが自身の技術を高め、試作を繰り返したであろう製作プロセスを隠喩的に捉え作品として表現しています。
チェアの制作工程では、まず枠を組み、パルプを薄く均一に広げてフォルムを成形し、乾燥させた後に湿度の高い環境で漆を塗る作業が行われました。柔らかくしなやかなパルプに漆が塗り重ねられて層を成し、結果としてこのチェアが誕生しました。
いずれのアーティストも、リリーチェアを通じてヤコブセンに想いを馳せ、自己の作品として再解釈しています。
私どもが扱っているいわゆる家具としての「リリーチェア」なども、長くお使いいただくことで風合いも増し愛着もより深いものとなり、皆さまにとってのまさに唯一の一脚になることと思います。
DANSK MØBEL GALLERY(ダンスク ムーベル ギャラリー)
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