【照明計画】心地よい空間のための、美しい灯りのつくり方

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心地よい空間のための、美しい灯りのつくり方。

私たちが照明計画を考える際のポイントにつき、本日はお話させていただきます。

 

 

 

 

照明には大まかに分類すると、空間全体を照らす全般照明と、タスクライトのように限られたコーナーに光を集める部分照明があります。この二つをバランスよく組み合わせることで部屋に立体感と奥行きが生まれ、空間が広々と感じられ、くつろいだ雰囲気がつくられます。

具体的には、以下の3点につき意識しながら私たちは照明計画を組みたてていきます。

 

①行為から灯りを配する

②人に近い灯りを配する

③光を手で押すように部屋の角に灯りを配する

 

一つずつ見ていきましょう。

 

【①行為から灯りを配する】

空間の中は、単に「明るければ良い」「暗ければ良い」というものではないと思います。「日本の家は明るすぎる」と言われることが多いですが、逆に、単に暗くしただけでは良い照明計画とは言えません。適切な場所に、適切な灯りを。その場所でどのようなことをするか、という点から考えて、照明計画は組みたてていきます。

例えば、ダイニングテーブルの上には「食事をするために必要な灯り」が必要です。一方、ただ単に通るだけの通路にはそのような灯りは必要ありません。このように、そこで何を行うかにより必要な灯りは異なってきます。下のイラストはルイス・ポールセン社が製作したものですが、大変端的にそのことを示しています。

 

 

必要なところが明るくなり、必要のないところはほんのり暗く。灯りが重層的になり、グラデーションが生まれ、過不足のない心地よい空間がうまれます。

(日本の住宅ではシーリングライト1灯で部屋の全体を照らしているケースも多いように感じます。このような照明計画では、なかなか立体感と奥行きを感じることが出来ません。光源が一つでは陰のできる方向も1方向のみのため平坦な印象になりますし、陰影のメリハリがなく空間全体がスパッと明るいと、「作業場」のような印象となってしまいます。行為から光を配した場合、複数の照明器具を用いることとなり、その結果陰も様々な方向に複数でき、重層的で立体感のある空間が出来ます)。

 

 

複数の照明を使用している一例。一室多灯と言い、一つの空間に対して複数の照明器具を用いることで重層的な空間が出来ます。このスペースだけでもかなりの数の照明器具が使われています。

 

 

【②人に近い灯りを配する】

照明器具を設置する場合、出来るだけ「人に近い位置」に器具を配置します。理由はいくつかありますが、光源と対象物が遠い場合、「光が散漫になってしまう」ことがまずは挙げられます。せっかくダイニングテーブルに光を当てたとしても、光源が遠いと照らされる範囲も広くなってしまい、全体的にぼんやりとしたメリハリのない空間になってしまいます。加えて、光源が目に入りやすくなるため、不快なグレア(眩しさ)も感じやすくなってしまいます。

また、光源と対象物の間に距離があると、不要な影も出来やすいです。「自分の手や頭で影が出来てしまい対象物が見えにくい、写真が撮りづらい」ということが稀にありますが、これは光源と対象物の位置関係と、あとはその距離が原因と言えます。

そこで、ダイニングテーブルではペンダントライトを低めに吊るし机上面と座った人の顔までを照らす、ソファの横には座る人に寄り添うようにフロアスタンドを置く、寝室ではベッドサイド・枕元に照明を設置する、など、「人に近い灯り」を配置することで、人に寄り添う心地よい照明がうまれます。

 

 

ソファ横のフロアスタンド。そこで過ごす人に寄り添うように照明を配置していきます。

 

 

【③光を手で押すように部屋の角に灯りを配する】

先ほどまでの①②は行為に着目した組みたて方(部分照明)ですが、同時にもう一点、部屋の角が明るくなるように照明を配置するとより心地よい空間になります(全体照明に寄与し、空間全体の質を向上させてくれます)。

部屋の角が暗いと奥行きを感じにくいですが、角が明るくなることでその空間に広がりが感じられます(特に入り口から対角線上の角など)。また、壁面に当たった光が柔らかく反射して室内にかえってくることで、空間の照度もとりやすくなります。

 

また、これは個人的にいつも感じていることなのですが、灯りは「人の気配そのもの」だと思います。灯りがあるということは人がそこにいるということ。つまり、安心感につながります。

機能だけからいえば、ダイニングテーブルの上にペンダントライト1灯だけついていれば他の照明が一切ついていなくても食事は出来るかもしれません。ただ、これは居心地の良い空間とは少し異なります(暗闇を背負って洞窟の中で食事をしているような気持ちになります)。

たとえ自分の背中側であったとしても、部屋の角にほんのり灯りをともすことで、そこに人の気配が生まれ、安心感につながります。とても重要なことと思います。

 

部屋の角に照明を配した事例。ダイニング上の照度はペンダントライトで十分にとれているが、奥のキャビネットにテーブルランプがあることで空間に奥行きが生まれ、暖かみがあり安心感のある空間が出来ます。
こちらも部屋の角に照明を配置した事例です。光のグラデーションが大変綺麗に表現されています。

 

 

【照明計画で一番大切にしていること】

本日は簡単に、照明計画の考え方につきお話させていただきました。細かい点は他にも色々とありますが、まず一番大切なことは、「人と灯りを親密で離れがたい関係にする」ということと思います。これは、ただ単に「明るいから良い」「暗いから良い」ということではなく、人が生物として灯りを用いてきた歴史そのものと思うのです。

 

※本ブログのvol.2は以下よりご覧くださいませ※

心地よい空間のための、美しい灯りのつくり方 vol.2

 

 

 




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