デンマーク人デザイナー “ボーエ・モーエンセン(Børge Mogensen)”は、「どんな人が使っても心地よく、使い易い」という点に重きを置いた様々な家具をデザインしました。彼の作品には、流行に左右されない、実直なデザインが数多くあります。そんな中でも“2213 ソファ”は、ボーエ・モーエンセンの信念が十二分に詰まっており、凛とした存在感を感じさせます。今回のブログでは”ボーエ・モーエンセン”と家具メーカー” フレデリシア社(Fredericia)”の繋がり、そして名作である“2213 ソファ”を、ご紹介致します。
<ボーエ・モーエンセン (Børge Mogensen)>
1914年、国防博物館や動物園、大聖堂等、歴史的建造物が多いデンマーク・オールボーに生まれ、1934年20歳の時に家具マイスターの資格を取得します。ボーエ・モーエンセンの親友で、共に切磋琢磨しあうハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)とは、この1930年代にコペンハーゲンで出会ったそうです。
そして彼は24歳になる1938年から3年間、王立芸術アカデミーで“近代デンマーク家具デザインの父”とも呼ばれる”コーア・クリント(Kaare Klint)”に師事します。在学中には、デンマークの書棚の基礎を築いた“ブックケース(Book Case)”や”フォールディングチェア(Folding Chair)”をデザインした”モーエンス・コッホ(Mogens Koch)”の建築設計事務所にも勤め、経験を積んでいました。
そんな中、FDB(デンマーク生活協同組合連合会)は、第二次世界大戦後の荒廃したデンマーク国民の生活を立て直すべく、復興プロジェクトを立ち上げ、最重要課題である生活必需品を生産する為、FDB Moblerを設立します。
この時、ボーエ・モーエンセンが師事していたコーア・クリントは、自身が監修に関わるこのFDB Moblerの代表責任者として、愛弟子である ボーエ・モーエンセンを任命したのです。ボーエ・モーエンセンの使命は「より美しく、より安く、より堅牢な家具」。コーア・クリントも、ボーエ・モーエンセンの才能を間近で見て、この使命を全うできると確信をしていたのではないでしょうか。
なお、このFDB Moblerでは、Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)も関わり、共にデザインをしています。
1950年の36歳で独立し、1955年には、フレデリシア社の躍進の為のコラボレーションが始まります。そして、彼は「より美しく、より安く、より堅牢な家具」に目を向けた数多くの名作を、1972年に逝去するまでの間にデザインするのです。
<デンマーク家具メーカー フレデリシア社(Fredericia Furniture)”>
フレデリシア社(Fredericia Furniture)は、1911年に、Ravnsø家により創業し、創業当初は椅子の製造を主軸としておりましたが、経営が上手くいかず、赤字続きでした。経営を良くする為の様々な対策の一つとして、1930年代には、曲木の椅子で有名なドイツの”THONET社”のライセンスを取得し、製作・販売をしていた時期もあったようです。
そんな中、1955年に30歳のアンドレアス・グラバーセン(Andreas Graversen)が、当時のフレデリシア社を買収した事が一つの転機となります。彼は、これまでの経営を見直し、高品質な家具製造をより強固にする事、そして、ボーエ・モーエンセンと協力して家具の製作をし、経営を立て直す事を考えます。
モーエンセンとグラバーセンとのコラボレーションにより経営も軌道に乗り、フレデリシア社とボーエ・モーエンセンの名前が世に知れ渡っていきます。そして、1955年以降数々の名作を生み出します。”1955年 No.1 SOFA”、”1956年 DINING SERIES”、”1958年 THE SPANISH CHAIR”、そして1962年に”2213 Sofa”がデザインされるのです。
その後もフレデリシア社では、ボーエ・モーエンセンの数々の名作に加え、ナナ・ディッツェルやセシリエ・マンツ、安積伸やスペースコペンハーゲン等、現在でも数多くの著名なデザイナーとコラボレーションし、様々な家具を発表し、製作を続けています。
<2213 ソファ>
このソファはモーエンセンの自邸で、彼自身により使われました。「作った家具の出来を確認するには、自分で実際に使用してみるのが一番」という考えから、妥協のない品質とデザインが追求されています。
座り心地の良さを実現している背もたれ・シート・サイドのクッションは、全て本体に固定されていません。クッションは直接的に荷重がかかり、一番劣化し易いパーツとも言えます。そんなパーツを、ボーエ・モーエンセンは”どんな人でも容易にメンテナンスができる”よう、デザインをしました。全てのクッションは、裏面に中材を取り出せるようジッパーで縫製されていて、クッションの中材に劣化を感じたら、中材を取り出し、叩いて空気を入れることで、中材をある程度復元する事ができるのです。使う人の事をしっかりと意識したデザインは、ボーエ・モーエンセンらしいと言えます。
実際に15年お使いになったモーエンセンのソファを先日メンテナンスさせていただきました。座面のクッションを取り出し叩いて空気を含ませたところ、ふっくらとまた厚みが戻ってまいりました。
まだまだ長くご愛用いただけそうで、本当に良いソファであるということをしみじみと実感しました。
以前に当店よりインタビューさせていただきました建築家・城戸崎博孝さんもモーエンセンのソファを愛用しています。その際に仰っていた言葉、「美しいもの・良いものを使う」という言葉が、ぴったりのソファです。
まさに「クラシックでシンプルなデザイン」「座り心地が非常に良く」「メンテナンスもし易い」「長く使い続けられる」という、ボーエ・モーエンセンの考える家具デザインの真髄が表現されている逸品です。
こちらのソファは、現在当店DANSK MOBEL GALLERYにて展示致しております。レザーサンプルもご用意しており、ご自宅のイメージに合わせてのカラー・素材提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。
※2213ソファについての詳しいサイズなどについては、こちらのページもご覧ください。
DANSK MØBEL GALLERY(ダンスク ムーベル ギャラリー)
▽株式会社KEIZOグループ店舗
REPUBLIC OF FRITZ HANSEN STORE OSAKA