※こちらでご紹介をしております内容は、2020年までカール・ハンセン社にて製作をしておりました際のものとなります。その為、現行品であるGETAMA社で製作された物と違いがある場合がございます。内容により、都度確認を取らせて頂きます。(2022年8月 追記) ※
以前にブログにてご紹介させていただきました、モーエンス・コッホのブックケースシステム。今回のブログでは、具体的な詳細をお伝えをさせていただきます。
(以前のブログはこちらをご参照下さいませ)
【ブックケースシステム 全体像について】
モーエンスコッホのブックケースには大きく分けて以下の3種類があります。
①扉付タイプ(キャビネット)→サイズ:高さ760mm×幅760mm×奥行き360mm
②オープンタイプ・深型(ディープブックケース)→サイズ:高さ760mm×幅760mm×奥行き360mm
③オープンタイプ・浅型(ブックケース)→サイズ:高さ760mm×幅760mm×奥行き277mm
上記のように、「扉付タイプのサイズは1種類、オープンタイプのサイズは2種類(奥行き違い)」となっています。基本的な種類はこの3種類のみで、あとは棚板などの位置や枚数が異なってくるだけです。今回は、この3種類のうち、扉付タイプについてご案内いたします。
【扉付タイプ(キャビネット)全体像について】
扉付タイプの正式名称は「MK88360/CABINET」。モーエンス・コッホの書棚で「キャビネット」と言えば、正確にはこちらの扉付タイプのことをさします。サイズは高さ760mm×幅760mm×奥行き360mmの1サイズのみ。床に直接置いて使用する場合、「台輪」と言われるパーツをまず床に置き、その上にこちらのキャビネットを置くことが一般的です。(上の画像も、台輪の上にキャビネットを載せています。台輪のサイズは高さ50mm×幅760mm×奥行き360mmですので、台輪+キャビネットの場合、高さは810mmとなります)。
【鍵について】
キャビネットの扉には取っ手がついていません。その代わり、鍵が一つついており、この鍵が「鍵+取っ手」の役割を果たします。
デンマークのヴィンテージ家具にもよく見られるこの「鍵+取っ手」ですが、鍵をとってしまえば扉がスッキリ綺麗にみえます。また、「扉を付けて中が見えないようにしているということは、扉の中はあまり人に見せたくないものを入れている」という前提の元、勝手に扉が開けられないようにするという実際的な意味合いも含まれています。鍵を回してからあけるため通常の取っ手よりも動作が一つ増えますが、鍵を回した際の感触もとても良く、「扉を開ける」という動作に、少しばかり情緒を加えてくれます。
【真鍮製のビスについて】
扉付タイプ(キャビネット)では扉を取り付ける蝶番に、真鍮製のマイナスネジを用いています。落ち着きのあるマットな真鍮は木材の柔らかい質感に自然と溶け込みます。
また、真鍮は柔らかく、気を付けてネジを回していかないとネジ山がつぶれてしまいます。あえて「真鍮のマイナスネジ」を用いることで、丁寧な仕事を行っていることを表しています。
【扉・側板・棚板について】
モーエンス・コッホの書棚で用いられている扉や側板、棚板などは複数の無垢材から作られています。扉に気品と重厚感を与えるというデザイン上の印象もありますが、その他にも重要な意味が含まれています。
モーエンス・コッホが書棚をデザインした当時は合板が存在しなかったため、無垢板を使用して書棚などをデザイン・製造していましたが、扉・側板・棚板などを1枚の無垢板で製作すると木材の「反り」「暴れ」が大きく出てしまい、使用に際し不都合が生じてしまいます。そこで、反り・暴れを抑えるために複数の木材を使用し、1枚の板を作ったのです。
かつてモーエンス・コッホのシェルフを製造していたルド・ラスムッセンでは、無垢材を集めて1枚の板を作る工程を「木のパズル」と呼んでいました。木目の色・節の有無・木目の性格(キャラクター)を熟練の職人が見分け、パズルのピースを一つ一つ埋めてパズルを完成させるようにして、「複数の無垢材から一枚の美しい板を作った」のです。製造過程で最も重要なプロセスと言われています。
【扉の構造について】
モーエンス・コッホのキャビネットの扉には、実はまだ秘密が隠されています。下の図をご覧ください。
先にもお伝えしましたが、扉は複数の無垢材を集めて作られています。そのうち、木材同士を接着剤でキッチリと固定しているのは図の青色の部分のみで、赤色の木材は接着剤では固定されていません。扉を後ろから見ると、良く分かります(後ろから見たときに、へこんでいる部分が接着剤を用いていない部分です)。
全ての無垢材を接着剤で固定してしまうと、木材が反ったり暴れたりした際に扉に亀裂が生じたり、また、扉が開きにくくなることがあります。そのような事態を防ぐために、赤い部分の木材には接着剤を用いず僅かに動けるようにし、そこで木材の反り・暴れを吸収しているのです。
少し込み入った内容となりましたが、いかがでしたでしょうか。一見しただけでは分からないような細やかな部分が、この書棚を名作にした所以の一つだと思います。次の機会では、扉の中(棚板・引き出し)の仕組みについてお話させていただきますので、どうぞまたお付き合いいただければ幸いです。
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