ポール・ケアホルムが1956年に発表したPK22。
1957年のミラノ トリエンナーレでグランプリを受賞し、翌年には大きな評価を得ることになります。
ビジネスパートナーのコル・クリステンセンはこのPK22の成功によって、ポール・ケアホルムのその後のデザインを開発するための資金を得ることができ、PK71やPK11などの名作が次々と生み出されていきます。
PK22の誕生
名作、PK22誕生プロセスは、ケアホルムが1951年に卒業制作としてデザインしたPK25からはじまります。
ケアホルムの支援をする以前、ハンス・J・ウェグナーのデザインを広く販売する『サレスコ』という組織の中心人物だったコル・クリステンセンは、その成功から世界中に販路を見出しており、ケアホルムに輸送コストを考慮し、分解、組み立てが可能なデザインを求めていました。
ケアホルムがコペンハーゲンの美術工芸学校で師事したウェグナーから卒業制作のテーマとして与えられた『新しいデザイン』のPK25は、ウェグナーと関わりの深いコル・クリステンセンとの出会いによって更なる新たなデザインへと発展していくことになるのです。
PK22のデザインと構造
ケアホルムはPK25の輪郭を採用しながらも、その構造として特徴的なひとつながりのフレームを分解することから始めました。
更にケアホルム自ら『欠点』と率直に表現した、シートの前部と背もたれ上部のクロスバーを無くしました。
マシンスクリューの導入
今年復刻したPK4。
PK22が発表される以前の1952年のデザインです。
コストを下げ、大量生産可能なチェアを作ることが目的だったこのデザインは、7本のスチールを溶接で結合しています。
知人の鍛冶職人に製作を頼み、自ら麻ひもを巻いて完成させたチェアは友人に格安で譲ったということですからそもそもデザイン背景が違うのですが、敏腕プロデューサー、コル・クリステンセンのリクエストに叶っていないPK4は、当時は製品とは成り得なかったのでしょうね。
溶接技術も向上し、美しいジョイントが可能になった現在は、輸送に関しても解体や組み立てをそれほど重要としなくなり、満を持して過去のデザインを蘇らせることができたわけです。
PK22が成功した大きな要因は、分解可能な構造を実現させるためのマシンスクリュー(ビス)を導入したことです。
この時に導入されたビスは第一次大戦中に航空機用に開発されたもので、高い引張強度を持ち、スチール製のPK22のパーツとしてこれ以上ないほど最適なものでした。
ケアホルムは、それぞれ1対の ①脚部 ②サイドフレーム ③クロスバーをこのビスで結合しました。
PK25をデザインしてから5年、ケアホルムはPK25に改良を加え、分解、組立てが可能なPK22を実現させせました。
このマシンスクリューを用いることによって木工の家具づくりと同様にスチールにおいても繊細かつ正確なジョイントが可能になったということは、ケアホルムにとって何より大きな収穫でした。
後に生み出されるPK80やPK31などの名作に採用されていることから分かるように、スチールの可能性を見出したケアホルムのその後のデザインに大きく関わってくるのです。
PK22 のバリエーション
ケアホルムはPK22を発表してから1年間、様々なバージョンを試しました。
キャンバス地のバージョンは当初PK21という品番でした(現在はPK22に統一されています)。
籐のモデルも現在も継続して生産されているバリエーションのひとつです。
最初のデザインでは籐の堅さを考慮し、サイドフレームの曲がりを大きく、クロスバーの曲がりを小さくしていました。
(その後、クロスバーは統一され、最終的にサイドフレームは籐バージョンの形状で統一されています)
PK22 & PK33 Special Edition【終了しました】
2023年7月1日より、12月31日までの期間限定で、PK22とPK33のスペシャルエディションが発売されています。
スペシャルエディションで使用しているピュアレザーは、染色や保護コーティングを施していないため、レザー本来の風合いを味わっていただけます。
経年と共に色味が深まるのも魅力の一つです。
販売価格
PK22 Special Edition 570,000円(税込 627,000円)
PK33 Special Edition 475,000円(税込 522,500円)
ポール・ケアホルムの名作⑦ PK11 – フリッツ・ハンセン正規専門店 / REPUBLIC OF FRITZ HANSEN STORE OSAKA (republicstore-keizo.com)
ポール・ケアホルムの名作⑨ PK22 ラウンジチェア
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