「偽物天国」に変化 中国消費者に本物志向
TAKEZOです。
本来ブランドというものはその土地に生まれ育った固有な文化を表していました。グローバル化が進んでこの固有性が失われています。国や土地の文化資本の表徴であったブランド価値をエディター側が販売拡大路線を取り、世界どこでも買うことができるようになりました。その半面、偽物の氾濫という副産物を生んでしまった。それはインターネットによる購入という流通の革新によってさらに加速されてきました。
2月15日のYahoo!ニュースに次のようなトピックス記事が載っていました。『「偽者天国」に変化、中国消費者に本物志向』(ウォールストリートジャーナル配信)というタイトルですが要点をまとめると、①中国消費者の態度に変化が現れつつある。中国市場調査研究集団の調査で顕著になったことは28~35歳の中国人女性の95%が偽ブランドのバッグを持つことを恥ずかしいと答えている。米コンサルティング会社マッキンゼーが行った調査によると偽者を買うのにためらいはないという回答をした人は2010年では15%と3年前に比較して半減している。②米国オバマ大統領は1月に行った一般教書演説で、偽造品の米国内への流入取締りを強化する意向を表明した。米政府によると昨年押収された偽造品1億2千万ドル(97億円)の内62%を中国が占めている。③中国も偽造品対策を強化している。2010年には南東沿岸部の複数の省で自動車部品、携帯電話その他多種商品を対象にした大規模な知的財産権侵害取締りを開始した。④ナイキの広報担当は「消費者は(ネット販売ではなく)本物の商品と小売店での購入で得られる本物の顧客体験を望んでいる」・・・など最近の消費動向の変化について書かれていました。中国大陸はこのところ正しい消費にめざめているのです。今や日本の市場の方がモラルを欠いた消費動向になってはいないでしょうか。
さて、上に掲げた写真は中国ではなく日本のある光景です。むろん,アルネ・ヤコブセンがフリッツハンセン社と共に作り上げたエッグチェアとは似て非なるものです。全体的なフォルムも微妙に違い、縫製の仕方と仕上がりなどの差は言うまでもありません。2年も経過していないのにひどい劣化が見えます。消費者保護という観点では日本の行政はまだまだ野放図に近いのです。先のオバマ大統領や、中国政府の断固とした意思はここには微塵も見ることができません。
このようなことが身近に起きていることは悲しい現実といわなければならないのですが、日本の賢明であって感性よく目利きであった生活者達はいったいどうしてしまったのでしょうか。偽物と感じても生活の中に放置しておけば一事が万事生活レベルは劣化していきます。欧米の先進国では先ずありえないことです。このような商品をクライアントに提案する人たちは確信犯的でありいずれ厳しい外部評価に晒されることになります。ニセモノは根源から排除する矜持を持った人たちであってほしいと思います。
- 買う側の問題
- 安価であることが優先事項で似て非なるものでも良いという価値観。ライフスタイルの簡便性傾向が強くなりモノにそれほど執着がなく使い捨てに近い消費行動が時流を作っている。しかし3.11以降その価値観は大きく転換して、やたら消費するのではなくいいものを慎重に選択して長く使う傾向になりつつある。
2.知識がないので見抜けなかった悲劇。
・法律上の問題
産業財産権法、不正競争防止法などの法規制はあっても抜け道があるということが問題。
①「偽者と知らずに売った場合には罪にならない」
②「本物だと信じて購入したもの(仕入れたもの)を販売し、後から偽物と判明した」場合は故意罪で
はないので刑事処罰を受けることはない。
・売る側の問題
ジェネリックプロダクツという抜け道・・・意匠権が切れたものはパブリックドメインに入って自由に制作
出来ることがゆるされているとするもの。本来の意義は同質同価値であるべきなのだが、陥っている のはコストカットの為に改ざんされるディティール、素材の変更、手抜き制作など。或るジェネリックプロダクツメーカーは「その時代のニーズやメーカーの考え方によりディテール、仕様は変更され、より使いやすい改良を加えています」と書いています。同形無価値を標榜しているにも拘わらず、いかにも社会的貢献をしているような表現を取り、「道徳なき商売」の虚言としか受け取れない状態です。
フリッツ・ハンセン社もコピー品に対し断固たる姿勢で臨んでいます。
2009年ミラノサローネで街中に置かれたモニュメント
メッセージには「本物が勝つ」と書かれ
台座には「Fight the Copy」の文字が・・。
フリッツ・ハンセン社HPにある「コピー製品との違い」のリンク。
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