AT HOME WITH:相澤陽介

『AT HOME WITH』では、フリッツ・ハンセンのアイコニックな家具と共に生きる、世代や文化の異なる多様な人々のストーリーをお届けします。

経年変化をたどったものの美しさ・シミや傷などは大切な思い出

今回はファッションデザイナーの相澤陽介さんです。


長年、「ホワイトマウンテニアリング」のデザインを行っている相澤さん。また、「モンクレール 」「アディダス」「ラルディーニ」「コルマー」をはじめとする色々なブランドとのコラボレーションも手掛けています。

また、デザインコンサルタントとして制服のデザインをしたり、美術大学の客員教授も担っています。

彼曰く、彼の仕事は『デザインを通じて、環境をより良いものにする』ということ。

彼の自宅は、幼いころから慣れ親しんだ軽井沢に山小屋を建て、自宅兼アトリエとして使用しています。

新型コロナの時期に。山小屋を建てるという長年温めてきた計画を実行したのだそう。建物の枠組みと大きな丸太以外は、ほぼすべてリノベーションしたそこには、彼のこだわりが詰まっていました。

「長野県軽井沢の山小屋は、日本とデンマークのデザイン理念と、相澤氏が敬愛するポール・ケアホルムのプロダクトが融合した空間です。」

デンマーク家具、とりわけポール・ケアホルムの家具に合う家

「生活する場所には特に過剰な装飾を求めていません。シンプルとはまた違い、材質や表情に独自性を持たせる事が重要。経年変化の美しさ、使っていくうちにできたシミやキズは大切な思い出の一つで、買ったときの綺麗な状態をキープしようとは思っていないです。

日本のデザインと住宅、建築は北欧のデザイナーに大きな影響を与えたと聞いています。先日、デンマークのポール・ケアホルムの自邸を訪れたのですが、その理由が分かりました。

日本には靴を脱ぎ、畳に代表されるように住空間の床に直接座るので床との距離が近いです。

PK22やPK81のように、ポール・ケアホルムの家具はすべて座面が低いので日本的な要素があります。

私のアトリエにも同じように、床は生活と近い場所にあり、時折床の上で寝ることもあります。こうした理由が私の家にポール・ケアホルムの家具が良く合うのだと思います」と彼はいいます。

憧れをもっていた北欧家具

東京の郊外にある多摩美術大学でデザインを学んだ彼はそこで教鞭をとっています。

彼の専攻はテキスタイルであり、北欧文化と非常に近しい関係にあり、学生時代から北欧デザイン、インテリア、テキスタイルにあこがれを持っていたと彼は言います。

大学にはセブンチェアがあり、10代後半に使用していました。ヤコブセンやポール・ケアホルムなどのプロダクトは授業でも取り上げられており、使うというよりも勉強するための教材として接してきたという。


彼には東京の自宅、アトリエ、先述した軽井沢のアトリエの3つの生活拠点があります。

そこの家具の選定基準はすべて異なるのだという。

妻と子供と暮らしている東京の自宅には次の世代に家具を引き継ぐ、ということも踏まえて美しくエイジングするものを。初めて買ったフリッツ・ハンセンの家具は東京の家を作る時に購入したヴィンテージのAXチェアだそう。

彼の仕事場であるアトリエにはブラックレザーのPKシリーズで設えて、彼が取り扱うパターンやカラーサンプルに集中できるように。柔らかい色調の内装を選んだ軽井沢はじっくりアイデアを掘り下げたいときに訪れるのだという。

ポール・ケアホルムの作品がすべて好きです

自分のデザインを行う時に彼の思考をイメージしたり、素材の組み合わせをテキスタイルに落とし込んだりと憧れであり身近な存在です。複雑でありながらシンプルで使いやすい。最大限の構築ののちに削ぎ落とすというデザインプロセスがデザインの心理であると思っているからです。