ジャコメッティ展

先日、心斎橋のエスパス・ルイ・ヴィトン大阪で開催されているジャコメッティ展に行ってきました。
彼の晩年の彫刻作品7点が展示されていました。

エスパス・ルイ・ヴィトン大阪

FONDATION LOUIS VUITTONが主催。東京・ミュンヘン・ヴェネツィア・北京・ソウル・大阪に設けられたエスパス・ルイ・ヴィトンにおいてFONDATION LOUIS VUITTONが所蔵する作品を展示することで、より多くの人に触れてもらう機会を提供することを目指しています。

天井が高く広々とした空間



アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti 1901-1966)

スイスの彫刻家。もっともよく知られている作風は、針金のように極端に細く引き伸ばされた人物彫刻です。
18歳の時、ジュネーヴ美術学校に入学。
21歳でパリに渡り、ロダンの弟子に指導を受けながら彫刻を学びます。その後亡くなるまでパリで過ごします。

細く長い作品

彼の作品で思い浮かぶのは細く長い人間の彫刻。

彼は人物全体をとらえて写生することは不可能なことだと悩み、悩み抜いた結果、記憶とイメージで彫刻作品を作る形をとることにしました。

しかし34歳の時、モデルを起用しモデルと真正面に向き合った彫刻を試みますが、そこで作られたのは親指程の像でした(10㎝もなかったそうです)。
彼曰く、見たものを記憶とイメージによって作ろうとすると彫刻はどんどん小さくなってしまったそう。
小さすぎたので、次は大きな作品を作ろうと思い彫刻の高さを固定してから作ったのにも関わらず、今度は細長くなったそうです。
彼の細長い作品の始まりです。

ある時、彼の代表作「歩く男」の細長い作品を見た人が、それをみて「瘦せすぎだろう」と言った際、「人体の空虚さを表すとこうなるんだ」と彼は答えたそうです。

彼にとって空虚さや弱さを抱えた人間を彫刻作品で形にするということは、目の前のモデルをそのままの姿で表現するのではなく、ひょろひょろと細長い人間であって人間でないような姿として現してるということなのでしょうか。
目に映るものを彼の「見えるとおりに」表わす。それを生涯追求しました。


日本人哲学者・矢内原伊作との出会い

彼はある一人の日本人とも深い交流がありました。
哲学者の矢内原伊作です。
矢内原がパリに哲学研究で留学していた時、ジャコメッティと出会います。
矢内原がパリを去ることになったのでジャコメッティに挨拶に行ったら、「君をちょっと描こう」と言われたそう。
留学のいい記念になると思って二つ返事で油彩画を描いてもらうことにした矢内原ですが、その「ちょっと」がなんと72日間になってしまったのだとか。何とか工面して留学を延期したエピソードが残されています。
日本に戻って大学で教鞭をとっていた矢内原は、何年にもわたって夏休みを利用して渡仏し、モデルとしてポーズを取り続けました。

「描きたいけど描けない。だから描きたい。なぜ掛けないのかを知りたいから描きたい」という、ジャコメッティの執拗なまでの「見えるものを見えるとおりに」実現しようとした創作活動に共感していたからできた行動です。

        ヤナイハラⅠ
横向きの矢内原

その後、矢内原は「ジャコメッティとともに」を代表する著書をいくつか出版しています。

1957年以降は版画集を出版するなど、彫刻だけでなく版画や絵画にも力を注いだジャコメッティですが、1966年にスイスで心臓疾患のため亡くなりました。

今回の会場では、1947年から晩年までの作品が展示してあり、50分に及ぶドキュメンタリー映像はとても見ごたえがありました。

2.7mある作品。

すごく大きな作品でしたが、近づくと指の跡までみることができます。

写真には撮りませんでしたが、頭部だけ、それも棒にグサリと刺さっている作品があってとても印象に残りました。
調べてみると「棒に支えられた頭部」という作品で、若かりし頃に一緒に旅をしていた老人の死を目の当たりにした衝撃を後に彫刻で表現したそうです。夢に出てきそうでした。。

ジャコメッティ展は6月25日まで開催されています。

ジャコメッティの作品を生で見れるこのチャンス。是非足を運んでみられたらいかがでしょうか。




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