本日はレザーについてです。
レザーとは、日本語の革の素材のことで、動物の皮をなめして作る「天然の皮革」と天然の皮革に似せて作られた「人造皮革」の2種類に分類されます。今回は天然の皮革にふれていきたいと思います。
まず、「なめす」とは一体どういうことを言うでしょうか?
①なめしとは
革製品の「なめし」とは動物の「皮」から、製品としての「革」にするための作業のことを言います。
革は動物の皮からできていますが、皮のままではもちろん腐敗して硬くなってしまいます。それを防ぐため、「なめし剤」という専用の化学物質で皮の層にあるコラーゲンを定着・固定させます。
なめす前は「皮」、なめした後は「革」と区別されます。
そしてなめす方法として、タンニンなめし、クロームなめし、そしてコンビネーションなめし(混合なめし・複合なめし)があります。
タンニンなめしとは
タンニンなめしとは植物性のタンニンを使ってなめす方法で、ベジタブルタンニンとも呼ばれています。タンニンとは「渋」のことを指し、いわゆる渋み成分です。タンニンには動物の皮の繊維を収縮させる効果があるため、タンニンなめしされた革は丈夫でハリ・コシのある固めの革になります。
そして、エイジングによる経年変化にもタンニンが大きく影響しています。
渋柿を例にあげてみると、渋柿の中身は外側と同様に当初の柿よりも濃い色になっています。
これはタンニンの渋みが日光によって作用して濃くなったからです。ヌメ革(ナチュラルレザー)を日光に当てると色が濃くなるのはこのためです。
タンニンなめしのメリット・・・皮に薬品を使用しないので、皮自体を痛めることなく自然な風合いを革に残すことができ、独特の手に吸い付くようなしっとりとした感触が感じられます。
そして一番の特徴は使っていくうちに変化する、経年変化を楽しんでいただけることです。
また、植物性の材料を使っているため、環境にも人体にも配慮されています。
人体への影響という面では、クロームなめしと違って金属アレルギーを起こすことがなく、肌が弱い人でも比較的安心して使えるということも、メリットの一つとして挙げられます。
日本では主にアカシア属植物(主にミモザなど)から抽出されたタンニンが一般的に使われています。ヨーロッパではチェスナット、南米ではケブラチヨと呼ばれる木から抽出されたタンニンがあります。
タンニンなめしのデメリット・・・水に弱く汚れやすいのが特徴です。また、温度変化に弱く、大量生産が難しいです。革の変化が嫌いな人にとっては経年変化が早く感じられます。そして高額です。
クロームなめしとは
クロームとは、「塩基性硫酸クローム」と呼ばれる化学薬品のことを言います。そしてこれをなめし剤として利用する製法を「クロームなめし」と呼びます。
かつては有害な六価クロームが使用されていた時代もありましたが、現在は規制が厳しくなり、人体に無害な三価クロームが使われています。
クロームなめしは約100年ほど前、ドイツで開発されました。時間と手間がかからないので現在流通している革製品の約8割がクロームなめしで作られています。中には一日で仕上がるものもあります。
クロームなめしのメリット・・・タンニンなめしに比べ加工時間が1日~5日と短時間でありながら、柔らかな革に仕上がることがメリットとして挙げられます。さらに、クロームの影響で革が白っぽく仕上がるため、着色しやすく発色が良いこともメリットの一つです。
クロームなめしのデメリット・・・経年変化があまりなく、変化を楽しむのには向いていません。また、革本来の質感や風合いは失われてしまう傾向にあります。
このようにタンニンなめし、クロームなめしにはそれぞれのメリットとデメリットがありますが、そのデメリットを解決すべく考えられた製法がコンビネーションなめしです。
クロームでなめした後、再度タンニンでなめすことによってタンニンなめしのメリットであるハリ・コシを加えることが可能になります。ただ、個々の長所に関してはオリジナルのなめしの方が優れています。両者の長所を取り込んだコンビネーションなめしの革はゆっくりではありますが経年変化を楽しむこともでき、最初から柔らかくて使いやすいので実用的な革であるといえます。
②グレインレザーとフルグレインレザー
表面が凸凹している「シボ」とよばれるものがあるものを総じてグレインレザーと呼び、その中でも人の手による加工が入っていないグレインレザーのことをフルグレインレザーと呼びます。フルグレインレザーは天然でかつ表面が凸凹している、もともと綺麗なシボが入っているものになりますが、そう簡単に手に入らない貴重で贅沢なレザーと言えます。
③着色について
では次にレザーの色の付け方についてです。
レザーの着色は顔料仕上げと染料仕上げがあります。それぞれご紹介します。
顔料仕上げ・・・革の表面を覆うように、水に溶けない塗料(顔料)をコーティングして着色すること。顔料の主成分は小さな「粉」で微細な固形物のため透明度は低いですが、代わりに塗料自体の色をしっかりと均一に着色でき、カバーリング力が高いのが特徴です。ピグメントレザーまたはコレクテッドレザーと呼ぶこともあります。
染料仕上げ・・・染料を使い、革の繊維を染め上げて着色する方法です。染料仕上げは皮本来の表情をいかして染めるため、透明感のある薄い膜で表面を覆います。よって、皮本来がもつシワや傷、血筋、虫さされの跡などの表情を楽しむことができます。アニリンという染料を使用することからアニリン仕上げ・アニリン染めと呼ぶこともあります。一方で、アニリン染めはしわや傷が多い皮には不向きな仕上げです。先述した顔料染めは表面の傷を隠したり保護したりする力が強いのですが、その反面、透明感が感じにくくなってしまいます。
そこで考えられたのが、それぞれの良いところを活かしたセミアニリン仕上げです。セミアニリンレザーでは下塗りで顔料を少量含む液を塗布し、その上から染料で着色します。これによって皮の表面の傷などは隠すことがで、透明感のある革に仕上がるのです。
④フリッツ・ハンセン社のレザー
最後にフリッツ・ハンセン社のレザーについてご説明します。現在全部で7種類のレザーがあります。
①エッセンシャルレザー・・・クロームなめしの顔料仕上げです。表面には保護コーティングが施され、バフ仕上げという機械研磨の方法を使って少しザラザラした質感に仕上げて、シボ加工を施しています。普段使いに適しており、比較的早くツヤが出てきます。
②オーラレザー・・・クロームなめしのフルグレインレザーです。顔料仕上げで、表面は保護コーティングが施されています。フルグレインレザーでシボがある上、顔料で染められているので経年変化も少なく、比較的革も厚めで、均一な表情を保つことができます。そのため公共施設でも多く使用されているレザーです。
③ソフトレザー・・・クロームなめしのフルグレインレザーです。顔料と染料どちらも使用したセミアニリンレザーで、表面は耐久性アップのため軽く保護コーティングされています。
④グレースレザー・・・クロームなめしとベジタブルなめしの両方を用いたコンビネーションなめしです。フルグレイン、アニリンレザーです。柔らかく風合いのあるレザーで、表面は比較的光沢がある発色です。傷はつきやすいですが、その分経年変化を楽しんでいただけます。
⑤エンブレイスレザー・・・クロームなめしのフルグレイン、アニリンレザーです。表面は特殊なワックス加工が施されてツヤ感があり、光に触れることで美しい自然なツヤが生まれます。
⑥ラスティックレザー・・・ベジタブルタンニンなめしのフルグレイン、アニリンレザーです。天然の模様や質感をそのまま生かすため、保護コーティングはされていません。アニリン染めのため使っていくうちに明るくなっていきます。経年とともに、光、環境、使用状況により異なる魅力的な変化が現れます。
⑦ナチュラルレザー・・・ベジタブルタンニンなめしのフルグレインレザーです。染色(アニリン)や保護コーティングは施されていないため、唯一使っていくうちに飴色になっていきます。傷や汚れが目立ちやすいですが、経年変化を楽しんでいただけます。
このように、レザーと一言でいっても、表情もそれぞれで、使い込むほど味が出るものから、経年変化が控えめでメンテナンスを頻繁に行わなくてもよいものまであります。ご自身のお好みや使う用途によってお選びいただければと思います。
当店ではレザー選びのお手伝いもさせていただきますので是非一度ご相談下さい。
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