ポール・ケアホルムの名作⑥ PK26 ハンギングソファ

PK26/1956



ポール・ケアホルムが1956年にデザインしたPK26は、ウォールマウントタイプのソファです。

フレームはPK25の構造をベースにしたスチール製で、壁に固定されたブラケットに吊り下げられ、連続した2つのシートが取り付けられています。

PK25/1951
左:PK26を横から見たところ。
右:インストラクション。取り付ける高さについても決まりがあります。
左:ブラケットを上から見たところ
右:金物の画像

片持ち構造


ポール・ケアホルムは素材に対し、深い造詣と敬意を持ったデザイナーです。

PK26のデザインにあたり、ケアホルムはいつもと同じように素材の特徴を表現しました。


スチールは『引っ張りに強い』という特性があります。

よく対比されるコンクリートは圧縮に強いですが、荷重に耐えられなくなると折れてしまいます。

それに比べてスチールは上からの圧力がかかっても張力が働くため曲がります。

ケアホルムはこの『スチールかかる圧縮力(人が座った時の重さ)』と『スチールの張力(折れないようにしなる力)』が等しくなるように厚みや構造を綿密に計算しました。

この相反する力によって片持ちの構造を可能にしたのです。

モジュール


PK26にみられる一つのユニットをモジュール化したアイデアは、ケアホルムにとってデザインの核ともいえるもので、自然界に存在するようなシンプルで多様性を備えた、様々な空間に適する理想的な形状を追求しました。

ケアホルムは『部屋には理想的な家具の配置がある』という信念があり、家具は空間を構成する一つととらえることで、『人』と『もの』を切り離して考えました。

結果、部屋のサイズに合わせた長さで壁から吊るされたPK26は、人体によって決まるサイズと部屋のサイズとを配慮したモジュールとなったのです。

建築家 エリック・クリスチャン・ソーレンセン


1957年、建築家エリック・クリスチャン・ソーレンセンの自宅のためにPK26の初期のデザインを初めて製作しました。

1960年頃のソーレンセンの自宅。
中央にケアホルムのソファを見ることができます。

ケアホルムの妻のハンナ・ケアホルムのロイヤルアカデミーでの教授であり、ケアホルムの初期の支援者の一人であるソーレンセンは、コペンハーゲンのホテル・オスターポートにケアホルムのデザインの家具を大規模に導入、1950年代の後半には初期の仕様のハンギングソファをいくつかの彼の建築に採用しました。

コペンハーゲンの製薬会社ルンドベックのオフィスに採用された
初期のPK26とPK59テーブル/1958

この初期のデザインは建築モジュールに応じて59㎝と65㎝の幅で作成されています。

このように、空間に合わせたモジュールをデザインに取り入れることで理想的な家具の配置を実現し、家具と一体となった空間を作り出すことを可能にしました。


PK26はケアホルムが持つ『建築の要素としての家具』という概念を最も明確に表現していると言えるでしょう。


現在


PK26は1963年に改良を加え、一般生産が開始されました。


フレームの裏面と下部のウェビングはキャンバス地のカバーに変更され、クッションの綿は柔らかい羽毛から豚毛、馬毛、ウールを重ねたものを用いて剛性を高めました。


同時にエレメントの幅を76㎝に統一し、W:76㎝×H:76㎝の正方形をモジュールとしました。



現在もオリジナルの構造から変更されることなく製造が続いており、特別なネイジャーレザーを張った仕様もお選びいただけます。

ネイジャーレザー






ポール・ケアホルムの名作① PK80/81 デイベッド

ポール・ケアホルムの名作② PK91 フォールディングチェア

ポール・ケアホルムの名作③ PK54 / PK54A ダイニングテーブル

ポール・ケアホルムの名作④ PK33 スツール

ポール・ケアホルムの名作⑤ PK0 ラウンジチェア









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