フリッツ・ハンセンの照明シリーズのうちの一つ、11月に新しいカラーが加わりアップデートされたKAISER idell™(カイザーイデル)
今回はデザイナーのクリスチャン・デルと彼の背景であるバウハウスについてご紹介いたします。
CHRISTIAN DELL(1893-1974)
ドイツに生まれたクリスチャン・デルはもともとは銀細工師の見習いとして訓練を受けていました。
その後、ワイマールにあるザクセン美術工芸大学で学び、初期の工業デザインのムーブメントの一翼を担うようになります。
BAUHAUS(バウハウス)
バウハウスと聞いてご存じの方も多いと思います。
ドイツ語で『建築の家』という意味を持ち、1919年にワルター・グロピウスがワイマールに設立した総合的芸術機関です。
無駄な装飾を廃し、合理性を追求するモダニズムの源流であり、現代社会の『モダン』な製品デザインの基礎となりました。
フリッツ・ハンセンのデザイナー、ポール・ケアホルム もバウバウスの影響を受けた一人です。
BLOG ポールケアホルムの名作① PK80/81 デイベッド
BLOG ポールケアホルムの名作② PK91 フォールディングチェア
BLOG ポールケアホルムの名作③ PK54/54A ダイニングテーブル
バウハウスの教育システム
その教育システムは予備課程で金属や陶器、家具など7つの工房でそれぞれの専門知識を持つマイスター(親方)から教育を受け、最後の建築過程へ進むというものでした。
設立当初、予備課程の責任者ヨハネス・イッテンは合理主義へと完全に移行できない中、グロピウスは1922年に招聘したワシリー・カンディンスキーやオランダの雑誌『デ・スティル』の影響などを色濃く受け、二人は対立してしまいます。
イッテンが去った1923年に新しく責任者となったモホリ=ナジの思想も伴い、バウハウスの教育は本来目指す合理的・機能的な傾向へと進んでいきます。
クリスチャン・デル
クリスチャン・デルはそんな1922年から1925年にかけてバウハウスの工房でマイスターとしての役割を担い、革新的なデザインを生み出す現場を支えたひとりです。
工業製品を肯定しながらも質の高い、量産の可能な規格化を目指したバウハウスの方針にに賛同するデルは、1926年からバウハウスのランプ工場でもあるカイザー社の照明デザインを手掛けることになります。
1年間に数百ものデザインを出掛けたそうですから、ものすごい情熱です。
名作の誕生
そして1931年、6631 Luxus Table Lampを制作。
優雅・上品という『リュクス』を名前に冠したこの美しいデザインは、カイザーイデルシリーズの中で誰もが認めるトップモデルとなりました。
6631-T Luxusをはじめとする、カイザー社(KAISER)とデル自身の名前(dell)にアイデア(idea)という言葉を組み合わせたカイザーイデル(KAISER idell)のシリーズは現在、フリッツ・ハンセンで製造されています。
洗練された素材、緻密なデザインを持つカイザーイデルのランプは、高貴なドイツのデザイン美学を象徴するものとなっています。
デッサウ移転後のバウハウス
ブログ冒頭でご紹介したバウハウスの校舎はデッサウに移転した際にグロピウスのデザインにより建築されたものです。
1928年にグロピウスは校長を退き、その後任のハンネス・マイヤーの色濃い共産主義によりナチスに監視されるようになります。
1930年、ミース・ファン・デル・ローエが校長となり、政治色の払拭を試みますが、1933年、ナチスの圧力で閉校される前にミースによりバウハウスは解散することになったのでした。
バウハウスはデザイン、建築のみならず、20世紀芸術と造形教育に大きな影響を与えたことは間違いのない事実です。
私はカイザーの照明を見るたびにバウハウスを思い、大きな感動と共に少しの寂寥感持たずにはいられないのです。
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