デンマークデザインの奇才、ポール・ケアホルム。
ケアホルムは、アットホームな食事の時間は家族にとってとても大切で、素晴らしい経験になると考え、円形のダイニングテーブルを選択しました。
ケアホルムの自邸
PK54はポール・ケアホルムがPK9と共に自邸のダイニング用にデザインした円形のダイニングテーブルです。
テーブルの天板はロール仕上げのホワイトの大理石です。
ロール仕上げは大理石の表面を凹凸が彫り込まれたスチール製のローラーで無方向に仕上げたもの。
光沢のない柔らかな石の風合いを残した大理石の天板は大変珍しく、自然界への憧憬が盛り込まれたケアホルムならではの選択と改めて納得します。
【素材と形状の関係性】
素材について深いこだわりを持っていたケアホルムは、『素材と形状は調和しなければならない』と考えており、テーブルトップの形状にも素材のもつ特徴を重要視しました。
例えば、PK61の天板は正方形で、当時使用していたスレートと玄武岩は、どちらも明確な方向性を持たないため、正方形に適していました。
スレートのPK61
また、初期のPK41とPK51はベニヤを使用していたため、その方向性により長方形の天板の形状を強調していました。
PK51
しかし、丸いダイニングテーブルPK37とPK39は木の直線的な模様と天板の形状が矛盾していたため、製造を中止しました。
【大理石の採用】
1960年、ケアホルムがミラノ・トリエンナーレでデンマークのセクションを設置した際、床材として使用したチポリーノという青灰色で白い血管の入った大理石に出会いました。
彼はその素材の魅力に取りつかれ、すぐにPK61のトップに使い始めました。
1963年にケアホルムがデザインしたPK54は、チポリーノ大理石を天板に使用した円形のダイニングテーブルで、ケアホルムの最も優れた、そして最もパワフルな作品のひとつです。
このチポリーノを使用したPK54は、ケアホルム邸のために作成したプロトタイプをはじめ1970年ころまで生産されていました。
【PK54のデザイン】
PK54は立方体のスチール製ベースと丸い天板で構成されています。
不透明な大理石とオープンなスチールのフレームの組み合わせ、また、立方体と円という対照的な素材と形状を持ったデザインは、無駄なディテールを排除されており、まるで芸術作品のような佇まいです。
【PK54の構造】
PK54の構造は天板にスチールをビスで留めるのみというシンプルなものです。
ベースは正方形に溶接されたサテン仕上げの2対のスチールを1方に差し込むようにビスで結合しています。
天板は一対のフレームにのみによって支えられ、まるで浮いているような印象です。
ケアホルムのデザインの随所にみられるこのような抜け感は、スチールの無機質な素材を軽やかに見せる彼の手腕。
素材に対する深い理解と信頼が伺えます。
ベースのフレーム同士を結合している部分。
小さなスペーサーを挟み、空間を生み出しています。
分割しての輸送を可能にするこの構造は、抜け感を出す上でも有効なものでした。
【SIZE】
天板は直径140㎝と比較的大きく、テーブルの高さは69㎝、やや低いサイズです。
重量のある大きな大理石の天板は低めに設定されたことにより、不安定さを払拭し、空間に落ち着きを与えています。
この低さが、床座に馴染みの深い日本人の感覚に不思議と合っているように思います。
【PK54A エクステンションリーフ】
PK54Aはテーブルの直径を140㎝から210㎝まで拡大し、最大12人が座れるようにするための拡張リーフです。
6ピースに分かれたメープルの集成材でできたリーフは、天板にスライドさせてはめ込み、下部をゴム製のOリングで固定するものです。
エクステンションリーフを使用しない時には小さな溝付きのラックに収納することができます。
PK54AのプロトタイプはPP MØBLERで開発され、コル・クリステンセンの木工品の多くを生産していたこの工房にて1984年まで生産されていました。
木目がまっすぐで色が均一な厳選されたメープル材を使用したこのリーフは、常に手作業で生産され、Oリングを装着する箇所には小さなレリーフ彫刻のようなアタッチメントが手彫りされています。
選び抜かれた素材と、職人技を必要とするPK54Aは工芸品としての価値のあるもので、PK54よりも高価なものとなっています。
ポール・ケアホルムの名作② PK91 フォールディングチェア
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