木の優しい風合いが特徴的な北欧デザインの中において、ポール・ケアホルムはスチールとレザーを用いた異色のデザイナーでした。
彼はまた、「一切の妥協を許さないデザイナー」としても有名でした。
これらの話からは、シャープで硬く、鋭くて冷たい印象を受けますが、一方でケアホルムは、自然や植物を愛しており、スチールを木と同じような素材であるとも捉えていました。
そしてケアホルムは、一見すると矛盾するようなこのような要素を、絶妙なバランスでその作品の中に体現します。
ケアホルムの代表的な作品でもある「PK22」。
この作品はミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアをリ・デザインしたものと言われており、バルセロナチェアに比べ装飾性を排し、シンプルでモダン、抜け感のある作品となっております。
この作品にもレザーとスチールが用いられていますが、決して冷たい印象はなく、むしろ温かみを感じさせます。
家具が機械のような印象を与えることを嫌ったケアホルムは、スチールをマットな仕上げにしました。
そのスチール脚の接地部分はどこかしら鳥の脚を想起させますし、背面にも有機的で優雅なアールがついており、人の背中を彷彿とさせます。
脚部のスチールのラインも、思わず目で追いたくなるような、私たちを引き込むような美しいラインを描いています。
デザインとはある種の物語であると思いますし、その物語をどう読み解くかは、読み手である私たちの楽しみでもあります。
フリッツ・ハンセン社は、デザイナーとメーカーとの共同作業により、そのような「物語る家具」を多く生み出してきました。
PK22もそのような作品のうちの一つです。
是非、PK22をご覧いただき、お座りいただいて、そのデザインが持つ物語を通して、ポール・ケアホルムという一人の人物を感じ取っていただければ幸いでございます。
ご来店を心よりお待ち申し上げております。