ポール・ケアホルムによるダイニングチェア “PK9” 展示しています。

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デンマーク人デザイナー、ポール・ケアホルムが1960年にデザインしたダイニングチェア“PK9”。先日より店舗にて展示しております。

メーカーはフリッツ・ハンセン社より製作。

 

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こちらのチェア、奥様のハンナさんが砂浜に座ったときに出来た跡からインスピレーションを得てデザインされた、と言われております。デザインにまつわる逸話ですが、実は同様の逸話は他にもいくつかございます。同じデンマーク人デザイナーであるハンス・J・ウェグナーは砂浜に寝そべった際にラウンジチェアをデザインしており(こちらのブログにてご紹介しています)、また、スウェーデン人デザイナーのブルーノ・マトソンは雪に残った跡をもとにチェアをデザインしたともいわれています。

 

同じような経験をもとにデザインされていますが、各々のデザイナーが全く異なる椅子をデザインしているのはやはり各デザイナーの個性が十二分に発揮されている証拠だと思います。

 

こちらの“PK9”、そのようにして誕生した座面ももちろんのこと、3本脚であることも大きな特徴の一つです。これら3本のスチールは地面から座面に向かい「曲線を描いて」座面を支えているため、スチールの弾力により座った時に独特なクッション性が生まれます。また、前後左右に身体を動かした際、その動きに合わせて椅子が少しついてくるような印象も受けます。

 

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3本のスチールの真ん中には黒いパーツが挟み込まれており、芯の部分が空洞となっています。ケアホルム特有の抜け感がここでも出ています。

 

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また、この3本の脚と座面との間にも黒いパーツを挟むことで、座面に浮いた印象を与えています。

 

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スチールの弾力と浮いた印象の座面が相まって、さながら「空中に浮いている」ような独特な座り心地の作品ですが、対照的に座面はゆったりとデザインされており、包み込まれるような安心感があります。このような脚部と座面の対比が秀逸です。

 

見た目のデザインで「浮遊感」を出すことは割と多いですが、座り心地までまさに「浮いた」印象を出すことは非常に稀だと思います。ケアホルムはその点を「スチールという素材の弾力」を用いて実現しました。見た目だけでなく実際の座り心地まで浮遊感を推し進め、それでいて座り心地も大変良い作品を生み出したケアホルムは、やはり探求心が強かったのではないか(ある種、野心的であったのではないか)と、個人的には推測しています(PK20というラウンジチェアも、PK9と同様の空中に浮いたようなデザインと座り心地を実現しています。PK9が「3本脚+スチールの形状(曲線)」で実現したのに対し、PK20は「カンティレバー(片持ち式)」の構造により実現しています。こちらのブログも合わせてご覧くださいませ)。

 

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